学生納付特例で猶予を受けた国民年金は追納すべき? 損益分岐点と判断プロセス

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20歳になったら、国民年金を納める義務がある!

・・・と知識としては知っていても実際納める立場になってみると、「どうやるの?」「どこへ納めるの?」などわからないことだらけ。

大学入学後、国民年金の納付案内が来て、よくわからないまま学生納付特例を申請した・・・という、私のような方もいらっしゃるのではないかと思います。

そして働き始めてしばらくした頃に、

とーこ

あれ、学生のときに猶予してもらってた分って納めた方がいいのかな?

と思い出して不安になり、色々と調べてみました。

まず結論から言ってしまうと、私は

とーこ

追納しない!

と決めました。
この判断に至ったプロセスを解説していきます。

目次

学生納付特例制度について

学生納付特例制度とは?

学生納付特例とは、

前年所得が基準以下の学生を対象とした、国民年金保険料の納付が猶予される制度

学生納付特例リーフレット(令和2年度版)|日本年金機構

です。

国民年金は、主に所得の少ない方に向け、年金の免除制度・猶予制度を設けています。

学生の本業は勉強。
働いていないのに納められるものもないだろうということで、年金未納にならないよう、学生納付特例制度を受けることができます。

学生納付特例制度で大事なのは、「免除」ではなく「猶予」ということです。

「免除」申請が受理された場合は、国民年金の全額または一部が免除されます。
全額か一部かは収入に応じて異なるので、決められた分のみしっかり払っていれば、将来受け取る年金額も支払いに応じた分が支給されます。

一方で「猶予」申請の場合は、本人が払うべき年金の減額はなく、あくまで「納付はしなくてもいいよ」と許可するものです。
ですので、払わなかった分は将来の年金額には反映されず、その分の年金が少なくなります

ただし、猶予期間も年金の受給資格期間には含まれます。

今は納付期間10年あれば年金受給できますので、22歳まで大学に在籍した場合も、25歳まで大学院に在籍した場合も、全期間学生納付特例が承認されていれば、卒業後30歳まで働いた段階で将来年金の受給が可能になる、ということです。

また定年後の老齢基礎年金だけでなく、万一死亡したり障害が残る事故に遭った時、遺族年金・障害年金を受け取るためにも納付期間の条件があります。

とーこ

学生のうちは学生納付特例制度を申請しておくべき。
ほったらかしで「未納」扱いになるのは避けましょう。

対象になる学生

日本年金機構の定義では、下記が対象の学生になります。

大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校※に在籍する学生等で、ご本人の前年所得が基準以下の方

※学校教育法で規定されている修業年限が1年以上の課程のある学校

<前年所得のめやす> 118万円+扶養親族等の数×38万円 で計算した額以下

学生納付特例リーフレット(令和2年度版)|日本年金機構

一般的な「学生」であれば、基本的に対象ですね。

しかし、そこそこ稼いでいる学生の場合や、収入がある社会人でダブルスクールとして通っている方などは、たとえ学生であっても学生納付特例制度を受けられません。

本人が頑張って稼ぐか、親に立て替えてもらうか。
どちらにしても納める義務があります。

別の話になりますが、学生でいるあいだは親の扶養に入っていることがほとんどかと思います。

収入が一定額を超えてしまうと、親の扶養から外れることになり、親の扶養控除がなくなる=課税所得が増える=親の手取りが少なくなる ということも起こりますので、こちらも考慮して収入をうまくコントロールしましょう。

保険料の追納が可能

とーこ

学生納付特例で猶予されたけど、年金は満額もらいたいな・・・

と考える方のために、猶予された年金を後から納めることもでき、これを追納といいます。

ただし追納の締め切りは猶予された年から10年以内

ですので「追納するかしないか」は、卒業後なるべく早めに決めておく必要があります。
ストレートで進学した人が、40歳になってから追納したいと思っても遅いのです。

(注)条件を満たすと、60歳~65歳の間に追納できる国民年金任意加入制度もあります

学生納付特例制度で猶予になった分の納付額は?

国民年金の保険料は、年度単位で見直されます。
2020年度(令和2年度)は月額16,540円です。

満20歳になった月から納付義務が発生しますので、誕生月と卒業までの期間により、猶予期間が異なってきます。

<例>10月生まれの人が、2019年4月に18歳で大学入学し、2020年10月に20歳、2023年3月に卒業した場合
 →猶予の月数は30か月なので、 16,540円 × 30か月 = 496,200円

保険料は毎年変わるので概算です。
ちなみに保険料は年々微増傾向になっています。

現状では、浪人や留年をせずに大学を4年間で卒業した場合、だいたい50万円が納付額ということになりますね。

追納しないと、将来の受給額はいくら減る?

2020年度(令和2年度) の満額の年金額は781,700円となります。
これは20歳~60歳までの40年間=480か月、欠かさず納付して受給できる額です。

(実際は納付期間と受給期間が違いますし、受給額も今後変わる可能性大です)

つまり、学生納付特例で1か月猶予されるたびに
 781,700円/年 ÷ 480か月 = 1,629円/年
がマイナスになるということになります。

先ほどの
<例>10月生まれの人が、2019年に18歳で大学入学し、2020年10月に20歳、2023年3月に卒業した場合
では、猶予期間が30か月でした。

猶予期間を考慮すると、実際にマイナスになるのは
 1,629円/年 × 30か月 = 48,870円/年
となります。

とーこ

満額から年間50,000円=月4,000円くらい減っちゃうってことか。
そこまでインパクトないな~。将来4,000円もらうより、今のうちに毎月1回飲み会行きたいな~

と思うのはちょっと待ってください。

ここまでで、猶予された納付額約50万円を追納すると、年間約5万円の年金になる、とわかりました。
ですので年金を10年間受給すれば元が取れる計算です。

そして年金って、死ぬまでずっともらい続けるものですよね。

年金の受給開始が65歳なら75歳で元が取れ、長生きすればするほどお得になる、ということなんです。

とーこ

寿命を考えると85歳くらいまでは生きそうだから…
納付額50万円が、年間5万×20年で100万円のリターンになる!?

とーこ

さっそく追納しないと!

と思うのもちょっと待ってください。

追納金以外の判断要素や選択肢について、次章で考えていきます。

追納金以外の判断要素

追納する金額について、次のような判断要素が絡んできます。
順番に説明します。

  • 【メリット】所得控除による節税効果
  • 【デメリット】延滞金の発生
  • 【デメリット】年金制度への懸念
  • 【デメリット】インフレの影響
  • 【要検討】老後の資産を増やす方法は年金だけじゃない

所得控除による節税効果

追納した保険料は、社会保険料の控除対象となります。

控除で課税所得が減ることにより、所得税・復興特別所得税・住民税が軽減されます。

途中の計算過程は省きますが、追納額×(所得税率+復興特別所得税率+住民税率) が戻ってきます

普通の会社員であれば(所得税率+復興特別所得税率+住民税率)はだいたい15%程度と思いますので、追納額が50万円なら戻ってくる額は75,000円。

これは結構大きいメリットですね! 実質42.5万円で将来満額になるわけですから。
節税効果を考慮すれば、受給後10年ではなく8.5年で元が取れてしまいます。

(注)還付される額は、ほかの控除要件も影響して変動します。

延滞金の発生

追納は10年以内という期限がありますが、3年度経過してしまった分に関しては、当時の保険料に延滞金を上乗せして払わなければなりません。

保険料の免除もしくは納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます

国民年金保険料の追納制度|日本年金機構

経過時間が多いほど延滞金も多くなってしまうので、10年経ってしまったら400円~600円/月の延滞金が追加となってしまうことも。

(注)延滞額も保険料と同様年によって変動します。

追納するのであれば、早めに済ませるよう心掛けたいところです。

年金制度への懸念

今20代~30代の人が、65歳から年金をもらえるのか、今告知されている額と同程度がもらえるのか、ちょっと不透明ですよね。

年金受給開始年齢が65歳→70歳に繰り下げられる日がくるかもしれませんし。

寿命の方はそう簡単に5年も延びるとは思えませんから、繰り下げられただけ総受給額は減少します。

国が老後資金目的として確定拠出年金の制度を整えた今となっては、繰り下げを見据えているのでは? とも思えます。

今後の年金制度によって損得は左右されますが、高齢化が進む日本では年金が増える方向への制度改正は望み薄ではないでしょうか。

インフレの影響

仮に65歳から受給できたとしても、受給が始まる頃にはお金の価値が変わっているケースもあります。

気になるのがインフレです。

インフレで物価が上がった場合、賃金も同じ上昇率だけ増えてくれないと、同じ値段で同じものが買えないですよね。

年金の場合も同じで、今毎月15万円で暮らしている人が、65歳になって同じ暮らしをしようと思ったら18万円かかってしまう・・・ということになりかねません。

現役世代の時点でもらえる金額は決まってるのに、世の中がインフレしているなら、その分生活に余裕がなくなってしまうというわけです。

とーこ

これは痛い

そして年金は「マクロ経済スライド」という方式が採用されています。

ざっくり言えば、インフレした時に年金を「払う」世代の負担が増えすぎないように、もらう側の金額を物価・賃金の上昇率よりも抑える仕組み。

少子高齢化で増え続けるであろう年金の予算と、減るであろう現役世代の税収のバランスをとる目的なわけですが・・・
いざもらう側に立った時には納得しにくいですね。

老後の資産を増やす方法は年金だけじゃない

猶予された納付額約50万円を追納すると、65歳以降に年間約5万円の年金になる。
これって、「50万円を元手に運用し、85歳まで生きれば5万×20年で100万円になる」と同じです。

つまり、年金を待つのではなく投資で年金と同じかそれ以上のリターンを目指すという方法があります。

というか、年金も国が資産運用してるわけなので、国に預けるんじゃなくて自分でやろう!ってことです。

具体的には、下記の条件で考えてみます。

  • 元本は42.5万円(元々の追納額50万円から所得控除による還付を考慮)
  • 目標額100万円
  • 25歳から運用開始、73.5歳まで48.5年間の運用とする
    ※85歳の時点で目標額達成しても遅いので。追納して元が取れる8.5年経過時(追納時の所得控除による還付を考慮)を基準としました
  • 毎年同じ利回りが出せ、利益は再投資して複利のメリットを活かす
  • 運用益にかかる税金は考慮しない

参考サイト:複利計算

結果、42.5万円を年利1.8%で運用できれば、48.5年間で100万円になる ということがわかります。

運用益にかかる税金を考慮していないので、目指すべき利回りはもう少し高くなります。
しかし、確定拠出年金やつみたてNISAを利用することで運用益も非課税になります。

(注)確定拠出年金やつみたてNISAは上限額があり、42.5万円を一括で運用開始できないことは注意。

年利1.8%を多いと思うか少ないと思うかは意見の分かれるところかと思いますが、市場連動するタイプの投資信託の平均値が年利5% というデータもあるので、非現実的な目標値ではないな、という印象です。

まとめ

以上のことをまとめると、追納して損にならないためには、次の条件が満たされる必要があります。

追納すべき! と言えるための条件
  • 65歳から受給開始する場合、以後10年以上生きること。
    (繰り上げ/繰り下げ受給の場合は受給月額が変わるので、元を取れる年数も変わります)
    (延滞金を上乗せして払った場合は、元を取れるまでの期間も延びます)
  • 現在の年金制度が維持され、受給開始年齢の引き下げや受給額の減少がないこと。
    最低限、現在と変わらないこと。
  • 受給する時に、納付時よりもインフレしていないこと。
  • 年1.8%の利回りを達成できないと思われること。
    もしくは資産運用しないと決めていること。

いかがでしょうか。

とーこ

今後のことなんてわからんわ

と思いませんでした? 私も思いました。そして、

とーこ

わからないからこそ国に任せるより、自分の責任で資産運用した方が、納得感が持てる気がする。
既に年金もらい損と言われている世代にとっては、年金制度が良くない方に改正されるたびに、デメリットが膨らんでしまいそう

というのが、追納しない!と決めた理由です。

また私の場合、追納のお知らせを放置していたために一部延滞金が発生してしまっていたことも、ささやかな理由の一つです。

延滞金の分を払うよりは、運用の元手を増やしておいた方が目標額への到達も早くなりやすいですし。

もちろん人によっては「運用で減るリスクがある」状態でいることがとんでもないストレスになってしまう場合もあります。
そういった方には心身の衛生上良くありませんので、とりあえず追納してしまうというのも一つの選択です。

追納分のお金を老後まで資産運用したらいくらになるか、投資リスクと自分のリスク許容度を勘案して、追納するかしないかを決めましょう!

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この記事を書いた人

「やりたいことだけやる毎日」を叶えるべく、収入複線化を目標にして試行錯誤中。
「時間をふやす」「お金をふやす」ためにやっていること・学びから考えたことなどを中心にアウトプットしていきます。
ふやして余った時間とお金は、文房具に全賭け。手帳大好き!

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